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「やぁ――――――!!!」
バシッ!
バサッ
鈍い音と共に白い旗があがる。
今日の勝負は私の勝ちだ。
25,5話
「プハッ!」
面をとって、濡れた手ぬぐいで顔を拭く。
春先の少し冷たい風が、火照った頬に心地よい。
「今日はいつになく気合が入ったいい胴打ちじゃったぞ」
「本当ですか!?ありがとうございます師範!」
「随分上手くなったもんじゃ。なあ弦一郎」
「ええ。今日は気合十分だな透」
師範、もとい弦一郎のお祖父ちゃんは目を細めながら笑う。
今日はいつになく綺麗に胴打ちが決まって、とても気分がいい。
精神が澄み切っているような感じだ。
入学式が終わって、ちょっと安心したからかな?
天気もいいし、弦一郎にも珍しく勝てたし、とにかく今日は絶好調だ。
「最初わしの元に来た頃は、危なっかしい子供が来たものだと思ったが。なかなかどうして、いい剣士になった。さすがわしの孫娘じゃて」
はっはっは。と笑う師範。
この剣道道場に来ている子供は、みんなこの師範の孫同然として扱われる。
弦一郎の祖父がやっているだけに、厳しい道場だ。
厳しい訓練を共にしたもの、その連帯感ははかりしれないものがある。
まあ・・・その仲間がいればの話だが。
昔は同じ年頃の子供が何人かいた気がするが、あまりの厳しい稽古なために一人、また一人といなくなってしまって。
まあ、つまり習ってる子供は弦一郎と弦一郎のお兄ちゃんと私だけだったり・・・
お祖父ちゃん厳しすぎるんだよ~・・・
あとは、もっと年上の人しか通いにこない。
土曜日のこんな真昼間。
道場には私と弦一郎しかいない。まあいつものことだ。
「では、いつもの通り座禅を組んで終わろうかの」
「「はい」」
静かに目を閉じる。
聞こえるのは木々のざわめきと鳥の囀り、鹿威しのカコンという音だけ。
剣道は精神面を鍛えるのに向いている。
やっていて実感する。
剣道もテニスも、どこかしら通じるものがある。
竹刀を相手に入れる。
この一瞬の緊張感。
テニスでポイントをとる時とひどく酷似している。
(・・・弦一郎のこの精神面の強さ・・・・・・剣道あってのものだと思うな・・・)
攻める気持ちと守る気持ち。
「攻防一致」という剣道の教え。
それはやはりテニスにも通ずる。
このどこまでもストイックな精神は、弦一郎そのものだ。
「やめ」
スッと目を開く。
静かだ。
心が湖面のように落ち着いている。
(・・・・・・私この世界に来てからの方が人間として充実してるわ・・・)
何だか今になって物凄く実感した。
いつもの日常では素の自分が出てしまうが、この道場、この姿勢、凛とした空気の中にいると、自分が自分でなくなる気がする。
テニスのコートに立っているときと同じだ。
この道場にいるときやコートに立っているときは、転んだりしないんだ。
体の細胞が、相手の動きや、竹刀やボールにしか反応しなくなるっていうか。
心も冷静になれる。
このままいくといつか自分は仙人とかになれるんじゃないだろかなんて、そんな錯覚さえ覚えてしまう。
いつもこうだといいんだけど。
でもいつもこうだったら本当に弦一郎の女バージョンになるので、想像だけに留めておく。
弦一郎はテニスでも剣道でも、攻めの姿勢だと思う。
対して、私は受けの姿勢。
弦一郎が「動」で、私が「静」。
弦一郎のプレイは剣道でもテニスでも、いつもの彼より饒舌な試合になる。
激情型なのだ。まるで噴火する火山みたいに。
対する私は、それに反して冷静極まりなくなる。
心が水のように穏やかになる。
だから私は、試合をしているときと、普段の雰囲気とがまるで違う。と言われる。
(・・・たしか精市が最初にそう言ったかな・・・・・・)
でも、試合が終わった後に握手するともう戻っちゃうんだけどね。
だから気が抜けてしまって、試合後の方がよく足元ふらついていたりして、それで精市によく笑われるんだ。
「では、これで今日の稽古は終わりにする。礼!!」
「「ありがとうございました!」」
礼に始まり、礼に終わる。
剣道は礼儀のスポーツだ。
剣道は「剣」の「道」であり、その道には終わりがない。
つまり、ひたすらに修行なのだ。
ああなんてストイック。
心まで筋肉質ですよ私達。
だから「筋肉夫婦」とか言われるんだよ。
でもどっちかといえば「筋肉姉弟」だと思う。年齢的に。
そんなことを悶々と考えていたら、真田家の美人母が昼食を持ってきてくれた。
「ご飯ですよー!!」
「はーい!」
私も弦一郎も、戸口まで昼食を取りにいく。
今日はおにぎりとナメコの味噌汁とお漬物が少々。
いつもご馳走様です。といって受け取ると、
いいのよ、透ちゃんは私の娘みたいなもんなんだから。と返された。
ああ~いい匂いだ~・・・
思わずお腹がぐうと鳴る。
「弦一郎、今日天気いいから縁側で食べない?」
「うむ。それはいい案だな」
私達はお盆を持って、縁側で腰を下ろす。
絶好の小春日和。
ウグイスまで鳴いたくらいにして、本当に今日はいい日和。
「「いただきます!」」
パク
「ん~・・・美味しい~!」
ご飯も美味しいし、いい天気だし、弦一郎にも勝てたし。
今日はもう最高!!!
「稽古した後って、いつもより数倍はご飯が美味しいよね!」
「うむ、美味い」
「幸せ~」
「お前はいつも美味そうに飯を食うな」
「だって小母さんのご飯美味しいもん」
そんな2人を後ろから微笑ましく見る真田家2人。
「本当に仲睦まじいのう」
「ええ本当に。透ちゃん、弦一郎のお嫁さんになってくれないかしら」
「うむ。透ちゃんが弦一郎の嫁になってくれたらわしとしても言うこと無しじゃ」
「弦一郎ったら、あんなに嬉しそうな顔しちゃって」
「やはり和子さんにもそう見えるか」
「ええ。透ちゃんと話しているときはいつもより幾分か年相応の顔をしますわ」
「ふむ。良い伴侶を見つけてよかったのう弦一郎よ。・・・ところで和子さん、わしの昼食はあるかの?」
「ええ、ありますよ。はいどうぞ」
「わしの孫娘」とか「私の娘」とかいう揶揄は彼らの中では半分以上は本気である。
大人2人がそんなことを話しているとは知らない弦一郎と透は、もくもくとご飯を咀嚼していた。
すでに真田母と祖父の中で弦一郎の未来の嫁になっているとは、これっぽっちも知らない透であった。
「ん~美味しい~!」
【終】
剣道わかりません(笑)
でも楽しかったwwwwwww
嫁www筋肉嫁ww たるんどる^▽^
バシッ!
バサッ
鈍い音と共に白い旗があがる。
今日の勝負は私の勝ちだ。
25,5話
「プハッ!」
面をとって、濡れた手ぬぐいで顔を拭く。
春先の少し冷たい風が、火照った頬に心地よい。
「今日はいつになく気合が入ったいい胴打ちじゃったぞ」
「本当ですか!?ありがとうございます師範!」
「随分上手くなったもんじゃ。なあ弦一郎」
「ええ。今日は気合十分だな透」
師範、もとい弦一郎のお祖父ちゃんは目を細めながら笑う。
今日はいつになく綺麗に胴打ちが決まって、とても気分がいい。
精神が澄み切っているような感じだ。
入学式が終わって、ちょっと安心したからかな?
天気もいいし、弦一郎にも珍しく勝てたし、とにかく今日は絶好調だ。
「最初わしの元に来た頃は、危なっかしい子供が来たものだと思ったが。なかなかどうして、いい剣士になった。さすがわしの孫娘じゃて」
はっはっは。と笑う師範。
この剣道道場に来ている子供は、みんなこの師範の孫同然として扱われる。
弦一郎の祖父がやっているだけに、厳しい道場だ。
厳しい訓練を共にしたもの、その連帯感ははかりしれないものがある。
まあ・・・その仲間がいればの話だが。
昔は同じ年頃の子供が何人かいた気がするが、あまりの厳しい稽古なために一人、また一人といなくなってしまって。
まあ、つまり習ってる子供は弦一郎と弦一郎のお兄ちゃんと私だけだったり・・・
お祖父ちゃん厳しすぎるんだよ~・・・
あとは、もっと年上の人しか通いにこない。
土曜日のこんな真昼間。
道場には私と弦一郎しかいない。まあいつものことだ。
「では、いつもの通り座禅を組んで終わろうかの」
「「はい」」
静かに目を閉じる。
聞こえるのは木々のざわめきと鳥の囀り、鹿威しのカコンという音だけ。
剣道は精神面を鍛えるのに向いている。
やっていて実感する。
剣道もテニスも、どこかしら通じるものがある。
竹刀を相手に入れる。
この一瞬の緊張感。
テニスでポイントをとる時とひどく酷似している。
(・・・弦一郎のこの精神面の強さ・・・・・・剣道あってのものだと思うな・・・)
攻める気持ちと守る気持ち。
「攻防一致」という剣道の教え。
それはやはりテニスにも通ずる。
このどこまでもストイックな精神は、弦一郎そのものだ。
「やめ」
スッと目を開く。
静かだ。
心が湖面のように落ち着いている。
(・・・・・・私この世界に来てからの方が人間として充実してるわ・・・)
何だか今になって物凄く実感した。
いつもの日常では素の自分が出てしまうが、この道場、この姿勢、凛とした空気の中にいると、自分が自分でなくなる気がする。
テニスのコートに立っているときと同じだ。
この道場にいるときやコートに立っているときは、転んだりしないんだ。
体の細胞が、相手の動きや、竹刀やボールにしか反応しなくなるっていうか。
心も冷静になれる。
このままいくといつか自分は仙人とかになれるんじゃないだろかなんて、そんな錯覚さえ覚えてしまう。
いつもこうだといいんだけど。
でもいつもこうだったら本当に弦一郎の女バージョンになるので、想像だけに留めておく。
弦一郎はテニスでも剣道でも、攻めの姿勢だと思う。
対して、私は受けの姿勢。
弦一郎が「動」で、私が「静」。
弦一郎のプレイは剣道でもテニスでも、いつもの彼より饒舌な試合になる。
激情型なのだ。まるで噴火する火山みたいに。
対する私は、それに反して冷静極まりなくなる。
心が水のように穏やかになる。
だから私は、試合をしているときと、普段の雰囲気とがまるで違う。と言われる。
(・・・たしか精市が最初にそう言ったかな・・・・・・)
でも、試合が終わった後に握手するともう戻っちゃうんだけどね。
だから気が抜けてしまって、試合後の方がよく足元ふらついていたりして、それで精市によく笑われるんだ。
「では、これで今日の稽古は終わりにする。礼!!」
「「ありがとうございました!」」
礼に始まり、礼に終わる。
剣道は礼儀のスポーツだ。
剣道は「剣」の「道」であり、その道には終わりがない。
つまり、ひたすらに修行なのだ。
ああなんてストイック。
心まで筋肉質ですよ私達。
だから「筋肉夫婦」とか言われるんだよ。
でもどっちかといえば「筋肉姉弟」だと思う。年齢的に。
そんなことを悶々と考えていたら、真田家の美人母が昼食を持ってきてくれた。
「ご飯ですよー!!」
「はーい!」
私も弦一郎も、戸口まで昼食を取りにいく。
今日はおにぎりとナメコの味噌汁とお漬物が少々。
いつもご馳走様です。といって受け取ると、
いいのよ、透ちゃんは私の娘みたいなもんなんだから。と返された。
ああ~いい匂いだ~・・・
思わずお腹がぐうと鳴る。
「弦一郎、今日天気いいから縁側で食べない?」
「うむ。それはいい案だな」
私達はお盆を持って、縁側で腰を下ろす。
絶好の小春日和。
ウグイスまで鳴いたくらいにして、本当に今日はいい日和。
「「いただきます!」」
パク
「ん~・・・美味しい~!」
ご飯も美味しいし、いい天気だし、弦一郎にも勝てたし。
今日はもう最高!!!
「稽古した後って、いつもより数倍はご飯が美味しいよね!」
「うむ、美味い」
「幸せ~」
「お前はいつも美味そうに飯を食うな」
「だって小母さんのご飯美味しいもん」
そんな2人を後ろから微笑ましく見る真田家2人。
「本当に仲睦まじいのう」
「ええ本当に。透ちゃん、弦一郎のお嫁さんになってくれないかしら」
「うむ。透ちゃんが弦一郎の嫁になってくれたらわしとしても言うこと無しじゃ」
「弦一郎ったら、あんなに嬉しそうな顔しちゃって」
「やはり和子さんにもそう見えるか」
「ええ。透ちゃんと話しているときはいつもより幾分か年相応の顔をしますわ」
「ふむ。良い伴侶を見つけてよかったのう弦一郎よ。・・・ところで和子さん、わしの昼食はあるかの?」
「ええ、ありますよ。はいどうぞ」
「わしの孫娘」とか「私の娘」とかいう揶揄は彼らの中では半分以上は本気である。
大人2人がそんなことを話しているとは知らない弦一郎と透は、もくもくとご飯を咀嚼していた。
すでに真田母と祖父の中で弦一郎の未来の嫁になっているとは、これっぽっちも知らない透であった。
「ん~美味しい~!」
【終】
剣道わかりません(笑)
でも楽しかったwwwwwww
嫁www筋肉嫁ww たるんどる^▽^
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