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20090124設置
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「ほとんど本編と同じなので掲載無しの方向で^^」


うへー・・・2人でお掃除かー・・・
あれ何時間かければ綺麗になるかな・・・





31,5話







「透、道具は持った?」

私は持参したタオルを頭に巻きつつ、コクリと頷いた。
キュッとしめれば何だか気合が入る。

「隣から雑巾と箒と塵取り借りてきたし。完璧!」
「よっしゃ!いざゆかん!!」

伊織の掛け声と共に、ゴミの巣窟。もといマネ部室のドアノブを回す。
ガチャリと音を立てて開けば、相変わらずの惨状が目の前に広がっていた。

「うへーやっぱり汚い」
「だねー」

ドアを開けっ放しにしているせいか、入り口近くの埃がホワホワと舞った。マスクが欲しい。
天井の隅を見やると、クモが我が物顔で巣を張っていた。
この住居人もどうにかしないといけない。


「どこからしようか?」
「まずは上からが掃除の基本!」
「さすが透!と、その前にボトルとか外に出しちゃおう!」
「そうだね。埃かぶってからまた洗うのも面倒だし」
「じゃあ、そのまま出そうか」


上というか・・・天井から?
天井からするには・・・物が邪魔である。
掃除というよりも、まずはここにあるガラクタ達をどこかへやる必要がありそうだ。

伊織が部室にあるカーテンと窓を開けた。
薄暗い部室が急に明るく感じた。ここは蛍光灯も切れている。
差し込む光で室内が照らされて、空中に浮いている埃が更に鮮明に浮かび上がる。
その埃が、窓からの風でいっせいに右往左往した。

(汚い・・・本当に汚い・・・)

その光景を見て、改めてここが汚いと思い知らされる。

「どこから手をつけていいか分んないね」

伊織の言葉に私も深く頷く。

「同感。とりあえずは中にあるもの全部出しちゃいたいかも」
「うーん。でも私たちだけじゃちょっと難しいものもあるよ?」

確かに。
私達2人がかりでやっても動かせそうにない棚なんかもあったりして、これは思ったより骨が折れそうだ。


「伊織、透!」
「ゆっき!」
「あ、精市」

後ろを振り向くと、ドアからひょっこり精市が現れた。
私達の様子を伺いに声をかけたのだろうが、この惨状の前にすっかり固まっている。

(うん・・・まあ、そうなるよね・・・。これはないもんな・・・)

この部室にさっきまで待たされていたことを思い出した。
よく考えたら結構先輩酷いですよ・・・(泣)


「ゆっき!今暇?暇だよね?手伝って!」

これは好機!とばかりに伊織が精市に声をかけた。
マネの仕事を手伝わせるのはちょっと気がひけたけど、これは手伝ってもらわないと終わらない。
今は猫の手も借りたいくらいだ。

「あ、うん。元々何か手伝うつもりで来たから」
「やった!透!ゆっきも手伝ってくれるって!」
「本当!?ありがとー!」
「……真田も呼んでくるよ」


そう言って精市は弦一郎を呼びに一旦外に出ていった。
弦一郎も手伝ってくれるなら百人力だ。

「弦一郎も来るなら、重いものは全部任せちゃおう!」
「そうだね」


それにしても、いるものといらないものと分けなければ・・・。
全部外に出したいけれど、棚がどうしても邪魔だ。

「捨てるもの多そうだね」
「…粗大ごみとかってどうすればいいんだっけ?」

そう伊織に質問すれば、伊織も「うーん・・・」と首を捻った。
外に置いておくのも邪魔だしなあ・・・。
2人で首を捻っていると、

「先生に頼んでゴミ回収業者に来てもらえばいいのではないか?」


そう的確な言葉が聞こえた。
あ、そうかなるほど!

・・・って誰?


耳慣れない声に後ろを振り返ると、そこにはおかっぱ頭の子が立っていた。
瞬間目が合う。
いや、合ったのかどうかよくわからない。
なんていっても、その子の眼が開いているのかどうかよくわからないから。

もしかして・・・この子って・・・・・

(デ、デ、デデデデデ、データマン・・・柳・・・!?)


思わぬ人物の出現で、なんだか顔に熱が集中し出した。

(め、めちゃくちゃ可愛い・・・!女の子みたい・・・!!)

伊織も何だか動揺しているのが見えた。
必死で笑みを噛み殺そうとしているようだった。私もそうだ。


「伊織も透も、何してるの?」
「ぅおっ!」
「ふぉ!」

弦一郎を呼びに言った精市の一言で我に返る。
(いかんいかん・・・。つい、思考がどこか飛んでたよ・・・)

?マークをつけた精市が私達の顔を見る。
そこにいるおかっぱ君に見入ってました。とか言えない。

「べ、別に何もしてないよ!ね、透!」
「うん!別に、何もっ?」


私達の挙動の怪しさに、不審そうな顔をする精市。
その光景を無言で観察する柳。
何だか微妙な空気が流れる。


「お前達何を突っ立てるんだ。入れぬではないか」


弦一郎がこの微妙な空気を破ってくれた。
さすがです弦一郎。グッジョブ!
伊織もすかさず弦一郎の言葉に追随する。

「あ、弦一郎!ちょうど良かった!さあ、手伝ってくれたまえ!」
「あ?ああ、部屋を掃除するのだったな。重いものは持とう。どれだ?」
「ありがとう!…じゃあ、この段ボールと、これと、それと、棚の上にあるやつをお願い」
「うむ」
「あ、ゆっきも、これと、あの箱とかお願いね!」
「あ、うん、わかった」

私達の流れるような誘導トークで、その場を切り抜けた。
ふ・・・大人って汚いもんなんだぜ・・・!(何)
切り込んだ伊織ナイスすぎる。

とりあえず、掃除開始だ。
まず手近にあるものをどんどん外に出していく。
やはり量が半端じゃない。
ダンボールも一つ一つが重かったり軽かったり様々だ。

「あ、透、ウォータージャグ発見ー!」
「お!それ使えるね!こっちは、バケツ見つけた。……だめだこれ。底抜けしてる」
「底抜けとか、どんなことしたらそうなるんだよ!」

私達が発掘作業をしている間、精市と弦一郎は邪魔だと思われる荷物を黙々と外に出す。
手近な物はもうほとんど外に出た。さすが仕事が早い。

(そういえば・・・柳はどうしたかな・・・)

柳の姿が見えないので、帰ったかな?と思い後ろを振り返った。
やっぱり柳の姿は見えない。
帰ったか、もしくは自主練でもしているのだろう。と考えてまた作業に戻ると、柳の声が聞こえた。


「どうだ、進んでいるか?」
「見ての通りだよ。全然進まない」

戻ってきた柳の声に伊織が背中を向けたまま返事をする。
柳も手伝ってくれるのか。なんといい子だ!と、そちらに顔を向けたら、また新たな人物達が現れた。

「おお、こりゃまた凄いもんじゃのぅ」
「うへー、汚ねぇ」
「これ4人で片付けるのか?」

部屋の有り様に3種類の言葉が吐かれた。
柳が連れてきたであろう3人に私も伊織も思わず目を丸くする。

・・・・銀髪に、赤髪に・・・ボウズ頭・・・。

もしかしなくても・・・・

・・・・仁王に、丸井に・・・ジャッカル・・・?


あまりの怒涛の出来事に頭の処理が追いつかない。


「俺たちも手伝おう」
「そうじゃのぅ、同じ1年のよしみじゃし」
「しょうがねぇな!」
「そうだな、やるか」


目をパチパチさせているうちに4人の意見はまとまったみたいで。
何やら手伝ってくれるようだ。
渡りに船とはこのことだ。非常にありがたい。


「・・・で?俺達はどうすればいい?」
「え!?あ、じゃあ・・・、同じように物をどんどん出していって貰えるかな?」
「おう!まっかせろぃ!」
「結構時間かかりそうじゃの」
「そうだな。パッパとやるか」
「あ、大きい棚とか、あまり重い物は難しそうだったら無理しないで。手首とか傷めたら大変だし」
「うん。手伝ってもらって言うのも難だけど、みんな選手なんだし体は大切にしてね」

そう私達が言うと、弦一郎や精市を含め、みんな少し驚いたような顔をして、それからニコリと笑った。


「ああ、気をつけよう」
「おう」
「OK。わかってるって」
「了解ナリ」
「フフ・・・ありがとう。2人とも相変わらずだね」
「まったくだ」

そう言って精市と弦一郎が顔を見合わせると、私達の頬も自然と緩んだ。

「「・・・じゃあ、みんなよろしくお願いします!」」
「「「「「「おう!」」」」」」


掃除、何か俄然やる気になってきたぞー!!!


【続】



ちょっといろいろセリフとか変えてスンマソン^^;;
藤のをベースにいろいろ足したり引いたりしました。

呼んでて思ったんだけど、藤の話のテンポがちょっと悪いのって情景描写が少ないせいじゃないかな。とか思った^^^^^^^
テンポ悪いっていうか、テンポ早いって感じかも。
でも、物語の大筋は凄い好きだwwwww
本当、片付けしてるー\(^0^)/って感じで。立海と掃除したいよハアハア

会話の間とかに適当に描写いれるとテンポよくなる気がするよ。
読み応えもあるし(^ω^)(その分書き応えもあるけど笑)
私は結構、勢いで全部書いちゃわないで、長め長めに書くようにしてるんだけどね(●´∀`●)

32話も楽しみです^^
個人的には、外と中と行ったり来たりしてる間に、
ゴルフ部見学とか終わった柳生が見に来て、声をかけて、惨状を見て違う部活だけど手伝ってくれたらいいなーとか勝手に思ってたよwwwwwww
それでみんなと仲良くなる的な。特に仁王^^

・・・とまあ何かあったらメールとかしちくり~(^^)ノ
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「ほとんど内容一緒だから掲載見合わせ?」


「テニス部集合!!」

テニスコート一面に響き渡る声。
割と近い距離にいただけに、私にもびりびり響いてきた。






30、5話








先程の合図でぞろぞろと部員達が集まってくる。

(うお・・・あ、あの子達は・・・・・・)


集まってきた部員には、当然新入生も含まれていて、
弦一郎と精市はもちろんだが、仁王に柳に、丸井にジャッカル・・・と思しき面々。
もちろんそれ以外にも新入生はわんさかいる。
さすが歴史ある立海大男子テニス部。人気の高さが伺える。

(新入生・・・みんな小さくて・・・か、可愛いいいいいい!!!!!)

私は思わず心の中で狂喜乱舞した。
自分が何だか変態みたいだ。でもオバさんから見たら中学生はやっぱり可愛いのである。
口元が緩みそうになるのを必死で抑えた。



「彼女たちがこれから俺たちのマネージャーをしてくれる子たちだ。秋原さんから順番に挨拶してもらおうかな」

素晴らしく晴れやかな笑顔で部長が言った。


「1年C組の秋原伊織です!自分が出来る限りで頑張りますのでよろしくお願いします!」

伊織は緊張してるのか、僅かに顔が赤い。
言い切った後に額に手を添えて、少し照れたような素振りを見せた。

(か、可愛いぞ伊織・・・!!今の仕草でファン増えたよ・・・!!)


瞬間、パッと精市と目が合った。
何だか微笑ましいものを見る目だ。ええわかります。伊織可愛いもんね。


(・・・と次は私か)

軽く深呼吸して、気持ちを整える。

「1年B組の笹本透です。マネージャー経験はないですが、精一杯やらせてもらいます。よろしくお願いします!」

そう言い切ってお辞儀をした。
こういう挨拶には最後に深いお辞儀をつける癖がある。
頭をあげた瞬間、精市の横にいた弦一郎と目が合ったのでニコッとしたら、微妙に不機嫌そうな顔をされた。

(・・・ヘラヘラするなってことですかね・・・き、気をつけよう・・・)


そうこうしている内に、他のマネージャーが自己紹介に入った。


「1年D組の桃月京子です!一生懸命頑張りまーす!ぜひ京子って呼んでくださいね!」
「同じく1年D組の島崎夏美です。みなさんのお手伝い頑張ります!よろしくね!」
「同じく1年D組の山川順子です!私も頑張ります!よろしくお願いしま~す!」


桃月さんと、島崎さんと、山川さんね・・・ふむふむ。
うん・・・・・・・・まあ、なんとも可愛らしい自己紹介で・・・

語尾に星マークとかハートマークとかがついていそうな声色。
部室で話しているのを聞いた限り、こんなにキャピッとした声ではなかったような・・・。

(はっきり言って、この手のタイプ・・・・・・苦手・・・)

これから一緒にやっていけるのか一抹の不安を覚えた。
伊織からアイコンタクトがくる。


--- アイコンタクト ---

(ね、どう?この子たち)
(どうも何も、選手目当てでしょ。仕事しなさそう・・・)
(だよね。まぁ私と透がいれば仕事はどうにかなるけどさ)
(そうだね。私たちがいればまぁ大丈夫か)


前途多難だなあ・・・
何となくそう思った。
湯沢部長が話をし始める。


「これから部活を始める。今日は全体ミーティングだ。とくに話すこともないのだが、1年は早く部に慣れることを頭に入れておけ。2、3年は大会が近いことを考え動くように。この後は各自自主練をするならしてもいいが、遅くても18時までだ。尚、明日からは朝練が7時からある。遅刻しないよう気をつけてくれ。以上解散!マネージャーはこちらに来てくれ」


月曜は全体ミーティング、自主練は18時まで、明日は朝練7時から・・・と。
伊織も同じことを考えていたのか、私と同じようにメモをとっていた。


「マネージャーの仕事はたくさんあるが、主に選手のタオルとドリンク作り。それに軽い怪我などに対応してくれ。あとは部誌とスコアの記入だ。マネージャーの仕事はこれくらいだが、なにか質問はあるか?」
「はい」

伊織が真剣な顔で手をあげた。

「秋原か、何だ?」
「ドリンクってボトルしかないんですか?あの、ウォータージャグみたいなものとかは」
「ああ、タンクが3つほど会ったと思うが。確かマネの部室にあったはずだ。ボトルも基本的にはレギュラー分だけしかないから平部員には自宅から持参してもらっている」
「わかりました。あと、仕事に必要な道具ってどこに置いてありますか?」
「全部マネの部室に置いておいた。分からなかったら聞きに来てくれ」
「ありがとうございます」


(・・・全部マネの部室に?・・・あの汚い部屋に?そのまま?ボトルを?)

本当にまずはあの部屋をどうにかしないといけないと思った。
いや、先に洗い物か・・・?
あ、洗い物といえば。


「あの、私からもいいですか?」
「笹本、なんだい?」
「タオルの予備がどれくらいあるのか知りたいのですが」
「ああ、タオルは各2枚づつあるようにはしている。あとそれ以外の予備に10枚ほどある。それは俺達の部室のほうにあるから後で取りに来てくれ」
「わかりました」


さすがにタオルは置かなかったようだ。
タオルもあの汚い部屋に置いた。なんて言ったら多分逆に怒ってたよ・・・。


「あ、それとボトルの中身なんですけど」
「うん?」
「薄さとかの調節をしたいので後でレギュラーの方々に教えてもらいたいのですが」
「ああ、分かった。伝えておくよ」
「ありがとうございます」
「とりあえずはそのくらいかな?今日は各自練習だから帰っても大丈夫だが」


メモし終わって伊織を見ると、ある意味キラキラした目で見つめられた。
はい。わかってます。『掃除』ですよね。ええ。

「私はもう少し残っていきます」という伊織の声に、「私も」と付け加える。
マネージャーが5人もいるんだ。掃除なんてすぐだよ!
そしたら残った時間でボトルも洗えるし、タオルも洗濯できるし、いろいろできる!うん!

だから、部長の「そうか。君たちはどうする?」っていう言葉に、当然「私達も残ります」って来ると思ってたんだけど。


「えー。私達は帰りますー」
「うん。とくに仕事ないんだし」
「ねー」


な  ん  で  す  と  !? 


思わず訝しい顔をしてしまった。
目が点。とはこの状態なわけで。
しばらく目をパチパチするしかなかった。
伊織も超微妙な顔をしている。


「そう。それじゃあ、また明日ね」
「はい!また明日!」
「さようなら!」
「さようなら」


笑顔で爽やかに去っていく3人。
風に乗って彼女らの香水か何かの香りがした。

(ちくしょー・・・こんなことだろうと思ったよ・・・!)


別にいいけどね!2人で掃除でも!!!
伊織が肩にポンと手を置いてくれた。
やはり心の友は伊織だけである。


「透、部室行こう」
「うん、あれどうにかしなきゃだね」

その言葉に伊織も苦笑いする。

「あ、その前に先輩たちに聞いとく?」
「ああ、ドリンク?聞いた方がいいかもね」
「部長。先ほどのドリンクの話ですけど、今聞きに行ってもいいでしょうか?」
「ああ、ちょっと待ってね」

ニコッと笑って、スゥッと息を吸う部長。
おい、まさか。


「レギュラー集合!!」


(っ!!)


びりびりびり、と体の芯まで響く声に思わずすくみ上がってしまった。
演劇部にでもいたんじゃないかっていうくらい大きい声だ。

(この先輩、見た目に反して声デカすぎです・・・)



声を聞いたレギュラーメンバーがあっという間に集まった。
丁度私達を取り囲むような形になる。
みんな背が高いので、立ってるだけでかなり威圧的だ。


「なんだ?湯沢」
「マネの子たちがお前たちに用があるって言うからね」
「俺たちに?」


興味深げな視線や、訝しげな視線。
さまざまな視線が頭上からいくつもチクチクと刺さる。

「ほら、取って食いはしないから大丈夫」

部長が笑顔で促すと、伊織がそれに了解して口を開く。


「・・・あの、先輩たちのドリンクの好みを聞いておきたくて」
「好み?」
「薄いとか、濃いとかなんですけど」
「……じゃあ、俺たちの好きな濃さにしてくれるってことか?」
「そうしようかなって思って」

「「「「おお!」」」」


ビクッ!!

いきなりの雄叫びに私も伊織もビクッとなった。
一応それぞれ喜んでいたようなので、いらない世話ではなかったようだ。


「ほら、お前たち。伊織と透が困ってるだろう。さっさと言って」
「ああ、そうだな!俺は3年の立川健太!濃さは…普通!」
「俺は3年の長谷川拓真。濃さは少し薄めがいいな」
「次俺!3年で北岡颯太!普通より濃いめ!」
「俺は・・・」


(ちょ!待て!ストップ!!)


メモを書ききる前に次々と言い出すもんだから、書いてるこっちはたまったもんじゃない。
私も伊織も必死で名前と好みを書き止めた。

思ったよりも気さくな人が多くて、ちょっとホッとした。
一人雰囲気が弦一郎に似てる人がいてちょっと親近感を覚えたくらいにして。


そして先輩達が去っていった後に、いつの間にか部長に名前呼びされていたことに気づいた。
まあ、別に今更どんな風に呼ばれようが気にしませんが。

伊織は部長のことは「湯沢部長」って呼ぶことにしたらしい。
(じゃあ、私も湯沢部長って呼ぶことにしようかな)


せめてレギュラーメンバーだけでも、早く名前と顔が一致するようにしないと・・・。
私は必死にメモした名前を呟いた。

(えっと・・・湯沢、立川、長谷川、北岡、小村、伏見、錦、三井・・・・・湯沢、立川・・・ブツブツ・・・)




【続】
「ぅわ…」
「何これ」
「これが普通らしいけどね」
「…けしからん」





29、5話







テニスコートに向かって飛び交う女子生徒達の黄色い声。
っていうか、人の群れでテニスコートが見えないんですけど。


(・・・どこのアイドルがコンサートするんだろう・・・)

私は軽く遠い目でテニスコート(という名の人の群れ)を眺めた。
伊織なんかは「ね、本当にここテニスコート?」なんて精市に聞いている。

うん、気持ちはわかる。




「君たちは入部希望?」


声のした方向を振り向けば、テニス部員の証である芥子色のジャージに身を包んだ人間が立っていた。
何だか優しそうな人。
先輩と思しき人の問いかけに慌てて首を振ると、部室の前まで案内してくれた。


「・・・あそこのベンチの真ん中に座っている人がテニス部部長の湯沢だよ。俺は彼らに少し話があるから、君たちは先に部長に入部届けを出してきてくれ」
「あ、わかりました」
「行こう、透」


弦一郎と精市をその場に残し、私と伊織は例の群れ(別名テニスコート)に向かう。
先輩が指を差した部長はテニスコート内にいらっしゃる。
なんとかして、この女子でコーティングされたバリケードを突破しなければいけない。

(っていうか・・・扉の前にまで・・・あーあー・・・)


狂乱する女子生徒は盲目も同然。
テニスコートへの入り口にもビッチリ張り付いていて、キャー!という可愛い声をあげている。
うーん。若い。


「ちょ、どいて!」
「何よあんた!」

どうしたもんか、と思案していたら、気づけば伊織が群れの中に果敢にも一騎単体で突っ込んでいた。


「押さないでよね!」
「順番守りなさいよ!」

「いいからさっさとどけっつーの!」


(伊織、格好いいー!)



しかし、伊織の特攻虚しく、「チッ・・・きりがないな」という台詞で戻ってきた。
お疲れ様です隊長。


「ね、伊織。これ無理じゃない?」
「でも、ここを通らないと中に入れないし」


確かに。入り口は一つしかない。
やはり神風よろしく突っ込むしかないのか。



「透!」
「え!?」


伊織は私の手を取って、再度突っ込んだ。

(ちょ!ちょ!ちょっ!!)

右に左に、ギュウギュウになるかならないかのところで女子生徒の間を抜け、なんとかフェンス内に入れた。
何だか満員電車の中を突っ切った感じに似ていた。

(す、凄いな伊織・・・!!グッジョブ!)


親指を突き出してグッとやると、伊織もグッとやってくれた。


「よし!透行こう」
「うん、ありがと」
「いえいえー」

笑う伊織の顔には、ほのかにやり遂げた感が漂っていた。
さすが伊織さんです。頼りになります。


・・・あのベンチに座っているのが部長かな・・・?

部長だと思しき男子生徒に声をかける。


「すみません、部長の湯沢先輩ですか?」
「ああ、そうだよ。君たちは入部希望かい?」
「はい。私たち、マネージャー希望です」
「そうか。入部届けをくれるかな」
「どうぞ」
「はい」

部長はスッと立ち上がって、入部届けを受け取ってしげしげと眺める。
そして私は気づいた。


(か、顔が・・・凄く整っている・・・・・・・)


いわゆる美少年ってやつだ。
切れ長の目元に黒い髪の毛。
涼しい雰囲気の日本美人。
見上げるくらいに高い身長。もちろん脚なんかも長い。

この世界のテニス部は、自然に美少年が集まるように出来てるんだろうか・・・。
私はこの世界の神秘をまた一つ知った。


入部届けの確認をし終わった湯沢部長が名前の確認をしてきた。

「私が秋原伊織です」
「笹本透です」
「小さい方が秋原さんで、高い方が笹本さんね」
「・・・そうです」
「(その覚え方どうなんだ)…はい」
「俺は湯沢大輔。男子テニス部の部長だ。これからよろしく」
「はい、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」


なんだか、思ったよりも簡単に入部できてしまった。
もっと厳正な審査とか、質問とか、面接とかあるかと思って身構えていただけに拍子抜けだ。


「もう少ししたら説明をするから、マネージャーの部室にいてくれ」
「マネージャーの部室?」
「マネージャー専用の部室だ。あそこだよ。先に何人かいるから一緒に待っててくれ」

指差した方向を見れば確かに。
部室と少し離れた場所に小さな建物がある。

わかりました。という言葉と共に部長を後にする。
またあの女子生徒の群れを突破することを考えると、すでに精神疲労に襲われた。

・・・・・・あのファンの女の子達なんとかならないのかね・・・




「失礼します」
「失礼しまーす」



伊織と一緒にマネージャーの部室に入ると、部長が言った通りマネージャー希望の生徒がいた。
人数は3人。全員女子生徒。
こちらと一瞬目が合ったものの、フイッと目を逸らしすぐにまたお喋りに夢中になる。

(うーん・・・せっかくだから仲良くなろうかと思ったけど・・・。この年頃の女の子って難しいな・・・)


伊織と目配せをして、中に入る。
室内には椅子が3脚しかないため、私達は壁際に立って待つことにした。


「ね、透。この部屋ってさ、いつも使ってると思う?」
「…思わない。すっごく汚いもん」
「だよねー」


はっきり言って。めちゃくちゃ汚い。
屋外の建物で土足だから、とかの次元ではない。
部室というより倉庫って感じだ。
雑多に物が置かれていて、どこに何があるのかも一目ではわからない。

(掃除しようよ・・・・・・)

男子だからって言葉で片付けていいものじゃないと思う。

(1番にやることは・・・掃除だな)


「透、頑張ろうね!」
「もちろん!」

伊織も同じことを思っていたのか、ガッツポーズをしている。
そうだ。こんなゴミや埃なんかに負けていられない。
5人もマネージャーがいるんだから、きっとすぐ終わるに違いない。
全然余裕ですよ!!
途端に元気になってきた。


「ここら辺の部誌ってさ読んでいいと思う?」
「いいんじゃないかな?別に隠すようなものでもないでしょ」
「そっか」


部誌を棚から引き抜いて中を覗く。
設立当初からの部誌の数々。
20年か30年分、へたしたらもっとありそうな量だ。
あまりにも昔のものは貴重そうなので、棚に丁寧に戻しておく。

部誌をパラパラとめくっていると、部室の扉が開いた。


「待たせたね。紹介と説明をするからこっちに来てもらえるか」


やっと、部活が始まる。
私は密かに呼吸を整えた。


【終】
「やぁ――――――!!!」


バシッ!



バサッ

鈍い音と共に白い旗があがる。
今日の勝負は私の勝ちだ。







25,5話






「プハッ!」


面をとって、濡れた手ぬぐいで顔を拭く。
春先の少し冷たい風が、火照った頬に心地よい。



「今日はいつになく気合が入ったいい胴打ちじゃったぞ」
「本当ですか!?ありがとうございます師範!」
「随分上手くなったもんじゃ。なあ弦一郎」
「ええ。今日は気合十分だな透」


師範、もとい弦一郎のお祖父ちゃんは目を細めながら笑う。
今日はいつになく綺麗に胴打ちが決まって、とても気分がいい。
精神が澄み切っているような感じだ。

入学式が終わって、ちょっと安心したからかな?
天気もいいし、弦一郎にも珍しく勝てたし、とにかく今日は絶好調だ。


「最初わしの元に来た頃は、危なっかしい子供が来たものだと思ったが。なかなかどうして、いい剣士になった。さすがわしの孫娘じゃて」


はっはっは。と笑う師範。
この剣道道場に来ている子供は、みんなこの師範の孫同然として扱われる。
弦一郎の祖父がやっているだけに、厳しい道場だ。
厳しい訓練を共にしたもの、その連帯感ははかりしれないものがある。

まあ・・・その仲間がいればの話だが。

昔は同じ年頃の子供が何人かいた気がするが、あまりの厳しい稽古なために一人、また一人といなくなってしまって。

まあ、つまり習ってる子供は弦一郎と弦一郎のお兄ちゃんと私だけだったり・・・
お祖父ちゃん厳しすぎるんだよ~・・・


あとは、もっと年上の人しか通いにこない。
土曜日のこんな真昼間。
道場には私と弦一郎しかいない。まあいつものことだ。



「では、いつもの通り座禅を組んで終わろうかの」
「「はい」」




静かに目を閉じる。
聞こえるのは木々のざわめきと鳥の囀り、鹿威しのカコンという音だけ。


剣道は精神面を鍛えるのに向いている。
やっていて実感する。
剣道もテニスも、どこかしら通じるものがある。

竹刀を相手に入れる。
この一瞬の緊張感。
テニスでポイントをとる時とひどく酷似している。


(・・・弦一郎のこの精神面の強さ・・・・・・剣道あってのものだと思うな・・・)


攻める気持ちと守る気持ち。
「攻防一致」という剣道の教え。

それはやはりテニスにも通ずる。
このどこまでもストイックな精神は、弦一郎そのものだ。


「やめ」


スッと目を開く。
静かだ。
心が湖面のように落ち着いている。

(・・・・・・私この世界に来てからの方が人間として充実してるわ・・・)


何だか今になって物凄く実感した。
いつもの日常では素の自分が出てしまうが、この道場、この姿勢、凛とした空気の中にいると、自分が自分でなくなる気がする。
テニスのコートに立っているときと同じだ。

この道場にいるときやコートに立っているときは、転んだりしないんだ。
体の細胞が、相手の動きや、竹刀やボールにしか反応しなくなるっていうか。
心も冷静になれる。
このままいくといつか自分は仙人とかになれるんじゃないだろかなんて、そんな錯覚さえ覚えてしまう。
いつもこうだといいんだけど。
でもいつもこうだったら本当に弦一郎の女バージョンになるので、想像だけに留めておく。

弦一郎はテニスでも剣道でも、攻めの姿勢だと思う。
対して、私は受けの姿勢。

弦一郎が「動」で、私が「静」。

弦一郎のプレイは剣道でもテニスでも、いつもの彼より饒舌な試合になる。
激情型なのだ。まるで噴火する火山みたいに。
対する私は、それに反して冷静極まりなくなる。
心が水のように穏やかになる。
だから私は、試合をしているときと、普段の雰囲気とがまるで違う。と言われる。

(・・・たしか精市が最初にそう言ったかな・・・・・・)


でも、試合が終わった後に握手するともう戻っちゃうんだけどね。
だから気が抜けてしまって、試合後の方がよく足元ふらついていたりして、それで精市によく笑われるんだ。



「では、これで今日の稽古は終わりにする。礼!!」
「「ありがとうございました!」」


礼に始まり、礼に終わる。
剣道は礼儀のスポーツだ。
剣道は「剣」の「道」であり、その道には終わりがない。
つまり、ひたすらに修行なのだ。
ああなんてストイック。
心まで筋肉質ですよ私達。

だから「筋肉夫婦」とか言われるんだよ。
でもどっちかといえば「筋肉姉弟」だと思う。年齢的に。


そんなことを悶々と考えていたら、真田家の美人母が昼食を持ってきてくれた。


「ご飯ですよー!!」
「はーい!」

私も弦一郎も、戸口まで昼食を取りにいく。
今日はおにぎりとナメコの味噌汁とお漬物が少々。

いつもご馳走様です。といって受け取ると、
いいのよ、透ちゃんは私の娘みたいなもんなんだから。と返された。


ああ~いい匂いだ~・・・
思わずお腹がぐうと鳴る。



「弦一郎、今日天気いいから縁側で食べない?」
「うむ。それはいい案だな」

私達はお盆を持って、縁側で腰を下ろす。
絶好の小春日和。
ウグイスまで鳴いたくらいにして、本当に今日はいい日和。


「「いただきます!」」

パク

「ん~・・・美味しい~!」


ご飯も美味しいし、いい天気だし、弦一郎にも勝てたし。
今日はもう最高!!!


「稽古した後って、いつもより数倍はご飯が美味しいよね!」
「うむ、美味い」
「幸せ~」
「お前はいつも美味そうに飯を食うな」
「だって小母さんのご飯美味しいもん」



そんな2人を後ろから微笑ましく見る真田家2人。


「本当に仲睦まじいのう」
「ええ本当に。透ちゃん、弦一郎のお嫁さんになってくれないかしら」
「うむ。透ちゃんが弦一郎の嫁になってくれたらわしとしても言うこと無しじゃ」
「弦一郎ったら、あんなに嬉しそうな顔しちゃって」
「やはり和子さんにもそう見えるか」
「ええ。透ちゃんと話しているときはいつもより幾分か年相応の顔をしますわ」
「ふむ。良い伴侶を見つけてよかったのう弦一郎よ。・・・ところで和子さん、わしの昼食はあるかの?」
「ええ、ありますよ。はいどうぞ」


「わしの孫娘」とか「私の娘」とかいう揶揄は彼らの中では半分以上は本気である。
大人2人がそんなことを話しているとは知らない弦一郎と透は、もくもくとご飯を咀嚼していた。
すでに真田母と祖父の中で弦一郎の未来の嫁になっているとは、これっぽっちも知らない透であった。


「ん~美味しい~!」




【終】

剣道わかりません(笑)
でも楽しかったwwwwwww
嫁www筋肉嫁ww たるんどる^▽^
うーん 部活動…悩むなあ…






23,5話







「お前は部活動はどうするんだ?」


弦一郎にそう質問されて、うーんと唸る私。


「どうした?何か迷っているのか?」
「うん。テニスか剣道かで。弦一郎はテニス?」
「無論」
「そうだよねえ…テニス部って名門だしね。やっぱり私もテニスかなあ…」


過去14年間全国大会出場という輝かしい記録がある立海大附属。
テニスをしている者としては最高の環境。
女テニだって強い。
立海に入ったからにはテニス部に入らなければ何だかもったいない気もした。


「うむ。剣道はお祖父様にいつでも見てもらえるしな」
「そうだね。…そういえば弦一郎ってクラス何組?」
「Gだ」
「へえーGなんだ……ってG?」
「ああ」

Gって…えーと…
ABCDEFG……
はあ…何とも遠いところからはるばる…

自分のクラスから近い階段を使えばもっと早く帰れただろうに。
わざわざ迎えに来てくれたことが何だか嬉しかった。

弦一郎は何とも優しいお子だよ・・・オバさん感激(ホロリ)


そんな会話をしながら玄関で靴を履き替えて、はたと気付いた。


(あ、伊織・・・)


式の席で前にはいなかったので、きっとBより後ろのクラスだろうと思う。
B以降のクラスならば、来るときに弦一郎は声をかけなかったのだろうか。


「伊織は?」
「伊織ならCクラスにいたぞ。来るときにまだホームルームをしていたのでな」
「そっか、じゃあ外で待ってたらそのうち来るよね」
「そういえば精市もCクラスのようだったぞ」

………

そうか・・・精市と一緒なのか。そうか。
何となく心の中で合掌しておいた。



伊織が来るまでの間、弦一郎の提案でテニスコートの見学に行く。
入学式の日はさすがに休みなのか、コートの中はガランとしていた。


「立派なコート……」
「うむ。さすが立海大附属。といったところだな」

弦一郎は満足そうに腕を組んでコートを眺める。


このコートから、後のビッグ3、2年生エース、詐欺師、紳士、スペシャリスト、守護神が生まれ育つのか・・・
そう考えたら、途端に鳥肌が立ってきた。



…見てみたい。凄く。



そう思った。
彼らが生まれる様を、育つ様を。
間近で見たいと、そして彼らを手助けしたいと、そのとき強く思った。




「私、マネージャーやる」


ふいに口を突いて出た。
急に口を開いた私に弦一郎はこちらを見る。
以外。といった顔をしていた。
私は、このコートを見るまでは女子テニス部に入ろうかと思っていた。
きっと弦一郎も、私は女テニに入るものと思っていただろう。

でも、このコートを見て思ったんだ。


「弦一郎、私テニス部のマネージャーやりたい」
「男子テニス部のか?」
「うん」
「女テニじゃなくていいのか?お前は選手としての素質もあるだろうに」
「うん」
「そうか・・・お前がそう決めたんだ。お前の好きにやったらいい」
「うん・・・頑張る」


小さくガッツポーズをすると、弦一郎も満足気に頷いてくれた。
早速、帰りにテーピングの本でも買って帰ろうかな!!
そう意気込んでいると、




「透――――――――――!!!」

「ぅわあ!」


伊織の声が聞こえたと思ったら、背中と腰に鈍い衝撃を受ける。
め、めっちゃ痛い・・・。


「!伊織ではないか。女子たるものスカートで走るでない!はしたないぞ!」
「やー!透、透ー!」
「おお?どうした伊織」
「ぅぅぅう……ゆっきが恐い、恐いー…」


・・・・・・

腰を擦りながら、振り向くとニコやかな笑顔で精市が歩いてきた。
伊織は息が切れてるようなのに、精市はむしろ晴れやか。

わーい。今日も美人だね精市ー。(棒読み)


そうか。伊織さんはあれから逃げてきたんですね。よしよし。
伊織は私にしがみついたまま、精市を睨み付けている。
擬音語にすると、「フ―――ッ!!!」って感じ。



「…威嚇?」
「伊織、野生の小動物に見えるよ」


弦一郎は未だにこの状況についていけないらしく、微妙な顔をしていた。

うん、気持ちはわかる。



「それにしても、どうしたの?何かあったの?」

伊織にそう聞くと、伊織は私の背中に顔を埋めながら聞いてきた。


「…透は知ってた?」
「何を」
「……部活動必須って」
「そりゃ、知ってたよ」
「………」
「………伊織知らなかったの?」


伊織はブンブンと首を縦に振る。
そのまま頭降るなよ。背中が痛いよ。

どうせ伊織のことだから、帰宅部で優雅な学生生活を送ろうと考えていたに違いない。
ふ。甘いな。


ピン!


私はとてもいいことを思いついた。
2人でやれば、絶対楽しいと思うんだ。


「伊織!」
「何?」
「私と一緒にテn「嫌だ」

言い切る前に伊織が全力で切り捨てた。


「最後まで言わせなさい」
「……わかった、最後まで言いなよ」
「私と一緒にテニス部に入ろう!」

伊織に何とも言えない嫌そうな顔をされた。
そんな嫌そうな顔するんじゃないよ。

「…………女テニ?」
「ううん、男テニのマネージャー!」

そう笑顔で言ったら。


「断固拒否する!」

笑顔で拒否られた。


「いいじゃん!何でダメなの!?」
「面倒臭い!」
「大丈夫だよ!伊織なら!!」
「面倒臭い!」


何を言っても面倒臭い。と拒否する伊織。
くそ・・・こうなったら強行手段だ!!



▼透 の こうげき!

「私もいるし、精市もいるし、弦一郎もいるよ!」
「…ぅう……でも」


▼伊織 が 揺らいでいる(よし、あともうちょっと・・・)

▼透 の 必殺!

「赤也もいるよ(ボソッ)」
「………!」

▼伊織 が これ 以上 なく 揺らいでいる
(ふっ・・・伊織が前世で赤也のファンだったことは知っているのだよ!そして・・・)


▼透 の こうげき!

「仁王もいるよ!(ボソッ)」
「入る!」
「えー!?おまっ!」

▼伊織 を 倒 した !
▼透 は 伊織 を 仲間にした!


(即答かよ!!!!!!)

私は脳内で某モンスターをゲットしたときのテーマを聞きながら盛大につっこんだ。

(くっ・・・何か釈然としないけど、マネージャー仲間ゲットだぜ!!!)


1人でやるよりは2人のほうがいい。
私は俄然やる気が湧いてきた。


「一緒に頑張ろうね!」
「おーう」
「やる気が見られんぞ!」
「いいんだよこれが私なんだから!」


早速土日に一緒に申請書を書こうじゃないか!
月曜日が楽しみだ!


うふふふ。

・・・・・・・・


そういえば、男子テニス部のマネってそんな簡単になれるのか?
人気高そう・・・。

私は早くも一抹の不安を覚えた。



【終】
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